2016/05/24

ジワリ広がる中国人向けスマホ決済

スマホなどモバイルネット利用者が約7億人という中国で幅広く浸透する微信によるスマホ決済。これが、日本の小売店舗にもジワリと広がりだしている。スマホでモノを買う消費スタイルに馴染んだ中国の若い世代の新しい「爆買い」需要を取り込むためだ。

微信は、中国テンセント社が開発したアプリで、英語名はWeChat。日本の「LINE」のようなアプリで、中国のチャットアプリで最も人気がある。月間アクティブユーザー数は2016年第1四半期(1〜3月)に7億6200万人で、LINE(2億1840万人)の約3.5倍になっている。

アプリには、決済機能も組み込まれ、銀行の口座を設定しておけば、デビットカードのように、微信での支払額を口座から引き落としできる。

常に持ち歩くスマホで手軽に決済できる便利さが受け、電気・水道などの公共料金から、タクシー代、食事代や日用品の買い物まで幅広く使われ、スマホのチャットアプリを超えた「生活インフラ」になっている。中国のネット調査会社アイリサーチによると、微信などによるモバイル決済は、2014年には前年の5倍に当たる5兆9924億元(約115兆円)と急成長している。

中国人の「爆買い」といえば、これまでは、中国銀行業界の統一規格で、クレジットカードやデビットカードとして使える「銀聯(ぎんれん)カード」の利用が圧倒的だったが、スマホになじんだ中国の若年世代の消費スタイルの変化は、銀聯カード一辺倒だった日本での「爆買い」のスタイルにも影響を及ぼさずにはおかないだろう。

「本当に今の中国の若い世代は日本のバブルの世代と似ている。バンバン金を使って自分の欲しいものを買う。20代、30代くらい、1980〜2000年代生まれですよね」

こうした中国の消費スタイルの変化にいち早く着目したのが、ネットサービス企業は「ウィーチャットを使って、本当の日本の情報をユーザーに伝えてあげる。ここにおいしい料理屋さん、非常にいい商品がありましたとか。割引のクーポンも出せる。店舗のみなさんもペイメント(決済)だけでなく、むしろ、ユーザーさんにどう来てもらうか、ユーザーさんとの関係づくりの方が極めて大事なんです」

当初は日本の小売店に、微信自体が知られておらず、苦労したが、最近、小売業界で急速に関心が高まっていると感じているという。既に、大丸松坂屋、ロフト、アインファーマシーズなど100社以上が導入。5月からは「プランタン銀座」が銀座の百貨店として初めてウィーチャットペイメントを導入した。

ネットスターズの支援で、昨年9月末、微信による決済を国内百貨店で初めて導入したのが大丸松坂屋。現在、心斎橋、梅田、京都、神戸、東京、札幌(以上大丸)、名古屋、上野(以上松坂屋)の8店舗の化粧品売り場で取り扱っている。

大丸松坂屋でインバウンドを担当するMD・チャネル開発統括部の小野圭一部長によると、同社の免税品の売り上げは、2012年の34億円から15年には338億円と3年間で10倍に増えた。「爆買い」は「百貨店が数十年経験してないぐらいの急激な成長を遂げたマーケット」だ。そして、その338億円のうち7割は中国本土の顧客の買い上げによるもので、香港、台湾の中華圏を含めると、割合は約8割となる。

現在、免税品の支払い手段は、全体の7割が銀聯カード。銀聯による売り上げの7割はクレジット、残り3割はデビット機能が使われている。中国ではデビットカードの方が普及しており、クレジットカードが多いのは意外な気もするが、中国人に聞くと、クレジットカードは利用するとポイントが付くため、「お得感」があることも理由のようだ。

微信による決済は、中国人顧客の利便性を高めるために導入したという。当初は認知度が低く、1日の利用は2、3件だったが、昨年11月中旬から1カ月間、テンセント主体で「キャッシュバックキャンペーン」を実施すると、大きな反響があった。キャンペーン中には1日50件を上回る利用があり、期間終了後も1日10件程度利用されているという。

大丸松坂屋の免税売り上げの内訳は、昨年までは、圧倒的に時計や高級バッグなどラグジュアリーブランドが多かった。しかし、年明けからの円高や、中国当局が内需拡大のため4月から関税を引き上げ、通関を厳しくして、高額品の持ち込みがわかれば追徴課税をかけるなどしたため、今年、日本での高額品の需要が一気に冷え込んだ。免税品売上高は前年比でマイナス基調になっている。内訳では、時計や高級バッグよりは安く、これまで3位だった化粧品がよく売れているという。

小野部長は「中国人観光客によるインバウンド(訪日観光客需要)が爆発的な成長をしていた時期が過ぎ、今年からはセカンドフェーズ(第2幕)に入っている」と話す。「インバウンド市場は、ずっとマイナス基調ではなく、波打ちながら右上の方に上がっていく。今仕込んで中長期的により成長するために、いかに仕掛けられるか。そのためには、お客様との関係構築ということが一番重要になってくる」

大丸松坂屋の微信の公式アカウントのフォロワーは3万人を突破。同社は、この公式アカウントで、化粧品などおすすめ商品の情報を発信するなど、中国人顧客と対話しながら誘客を試みている。同社は、さらに、これまでに関係を作った顧客などが、中国にいながら日本の商品を買うことができる「アウトバウンド」の越境電子商取引(EC)についても研究を始めている。

中国本国では、微信以外にも、企業間電子商取引最大手の中国アリババグループの「支付宝(アリペイ)」や、銀聯カードもスマホ決済への対応を始めている。

日本でも、爆買いのトレンド変化で、時計や高級バッグなどの高額品に比べ、比較的安価な化粧品などが売れるようになっていることも「スマホ決済」には追い風にはなるかもしれない。中国人観光客の「爆買い」スマホ決済は、どこまで広がるだろうか。

中国の瀋陽・大連・上海に住んでいる20代から60代までの中国人20人に、日本での買い物に、どんな支払い手段を使うか聞いてみた。40代以上は、ほぼ銀聯カードのクレジットやデビット機能を利用するが、20〜30代ではほとんどが、微信や支付宝も使うと答えた。どちらかと言えば、女性の方がスマホ決済をよく使っている。

日本での買い物では、瀋陽市の会社社長、松さん(48)など、裕福な人は「クレジットカードしか使わない」という人もいる。銀聯カードでは、セキュリティー面などで安心感があるのも理由の一つらしい。一般の若年層では、クレジットカードの「ポイント」と微信支払いでの「割引」を比較して決めるという人が多い。

瀋陽に住む大学教師、晋さん(35)は「微信や支付宝が割引クーポンで安くなれば微信や支付宝で払う。安くならないならクレジットカード」と話す。

情報源:毎日新聞

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