2016/06/16

中国決済市場の発展動向について~モバイル決済に注目

2002 年、中国銀聯の設立に伴い、中国の決済業界は電子化の発展段階に入った。2004 年、「支付宝」(アリ ペイ)の誕生に伴い、第三者決済業界は盛んな発展段階を迎えた。オンライン決済、モバイル決済、アクワイ アリングなどの多様な決済ルートが使われている。中国の決済事業に関する産業チェーンには、中国銀聯と 中国人民銀行決済システムからなる決済・清算体系、商業銀行、オンラインとオフラインの第三者決済機関、 通信キャリアおよびソフト・ハードウェアのサプライヤーなどが含まれる。 

革新は決済業界の革命をもたらす。支付宝に代表されるインターネット決済の発展は銀聯を中心とする決済 モデルに影響を与え、オンライン決済企業の O2O 業務拡大も銀聯のオフライン決済市場に影響を与えてい る。また、モバイル決済は近年、急成長しており、このうち、インターネット企業が主導する QR コード決済およ び銀聯が主導する NFC 決済の競合は今後の発展方向として注目を集めている。

決済業界発展の歩み

中国における決済業界の発展として、国金証券のレポートでは「金卡工程」、銀聯時代、第三者決済時代と いう三つの段階を経過したという見方がある。
  • 1993年6月~ 国務院は電子マネーの発展を目的として、電子マネーの応用を重点とする「金 卡工程」を実施し始めた。同プロジェクトはインターネットシステムを通じて、電子情報による振込 みを可能とし、電子マネーの流通を実現した。同プロジェクトは、中国の金融現代化を加速させ、 社会インフラの運営効率を向上させ、住民生活を利便化し、国民経済と社会の情報化プロセス を促進した。 
  • 2002年3月~ 国内銀行カード協同組織である中国銀聯股份有限公司(以下、「銀聯」、ユニオ ンペイともいう)が上海で設立され、全国で統一された銀行カードの銀行間情報交換網を構築し、 統一された業務規範と技術的な規格を制定し、銀行カードの銀行間相互利用および業務の共 同的発展を基本的に実現した。 
  • 2004年~ アリペイなどの第三者決済機関の出現によって、銀聯の市場シェアが奪われつつあ り、中国の電子決済市場は急速な発展軌道に乗り、決済機関が相次いで現れた。 

決済業界リスクを防止するため、2010 年 6 月、中国人民銀行は「非金融機関決済サービス管理弁法」を公布 し、中国人民銀行の許可を取得していない非金融機関と個人は決済業務に従事してはならないと規定した。 第三者決済を含むノンバンクは 2010 年 9 月 1 日までに許可証を取得しなければ、決済業務への従事を禁止するとし、ノンバンクによる決済サービス従事の規範化が狙いであった。

2015 年 8 月、人民銀行は「非銀行決済機関ネット決済業務管理弁法(意見聴取稿)」を公布し、パブリックコメ ントを募集した。ここでは決済口座を分類し、限度額管理を行い、ネット決済機関は金融業務に従事する機関 向けに決済口座を開設してはならないと規定している。これは、インターネット決済業務に対する監督管理を強化し、規範化した規定である。

決済業界の構成とその産業チェーン 

1 業界構成

中国の決済業界には主にオンライン決済、モバイル決済、オフラインのアクワイアリングおよびプリペイドカー ドなどの関連業種が含まれる。インターネットの普及による影響から決済業界に大きな変化が生じており、非現金決済市場、とりわけ電子決済市場が拡大し、同時に PC 端末からモバイル端末へのシフトが加速したこと で、第三者決済の業界競争は激化したが、決済効率と利便性を向上させた。

オンライン決済 
オンライン決済とは、デスクトップやポータブルコンピューターなどの機器を通じて、インターネットを通じて決 済命令を出し、ユーザーと店舗、店舗と店舗の間の資金移転を実現することを指す。運営主体によって、オン ライン決済は銀行によるネットバンキング決済と第三者によるネット決済の 2 種類に分かれる。

ネットバンキングは現在、取引規模が最大の電子決済チャネルであり、運営主体は商業銀行で、オンラインと O2O場面に応用されており、法人と個人の顧客およびその他事業組織の法人顧客向けにサービスを提供する。顧客数の基礎と資金の安全性から、ネットバンキングの市場規模がオンライン決済に占める割合が最も高 い。決済は商業銀行の基礎業務の一つであるが、ネットバンキングはインターネット時代に打ち出された革新 的なサービスであり、顧客の使用体験を高めるほか、オフライン決済業務のコストを引き下げることができる。

第三者インターネット決済の運営主体は支付宝、財付通(騰迅傘下の第三者決済サービス、微信支払)など の第三者決済機関で、PC側におけるゲートウェイを通じた支 払、認証支払などの決済ルートによって、第三者決済口座ま たは銀行口座を通じて決済を行う方式であり、主にオンライン 電子商取引の発展とユーザー習慣の養成につれて、第三者 インターネット決済の市場規模は 50%以上の伸び率で急拡大 しており、現在の規模は 8 兆元に達している。第三者 決済機関は取引手数料や帳簿面資金の運用益で利益をあげ ているほか、オンライン決済は決済取引のデータを把握できる ことから、これをもとに、マーケティングや信用調査などの「付 加価値サービス」を発展させることができる。

モバイル決済
モバイル決済とは、ユーザーがモバイル端末(普通は携帯電 話)を用いて購入消費したモノまたはサービスを決済するサー ビス方式である。実現方式によって、リモートペイメントと近接 ペイメントに分かれ、リモートペイメントとは通信キャリアが送信 した決済命令を通じて決済を行うもので、オンライン決済のモ バイル端末への拡大である。個人応用、モバイル金融、O2O などに応用され、支付宝と余額宝、微信銭包、配車アプリなど の形式がある。他方、近接ペイメントとは電子設備と新型処理 設備との相互通信で行われる決済業務であり、NFC(非接触 式通信技術)、Bluetooth(ブルートゥース)、QR コード、携帯 電話のカード読み取り機などの形式が含まれる。

モバイルバンキングとは携帯電話を決済端末とする銀行決済サービスであり、リモートペイメントを主なルートとして、一部のモバイルバンキングにQRコード決済、NFC決済などの近接ペイメントを備える。現在モバイル バンキングの普及率と利用率はネットバンキングを下回るが、今後、モバイルバンキングの取引規模に大きな 成長余地があると見込まれる。

第三者モバイル決済の運営主体は第三者決済機関、決済 ルートにリモートペイメントとQRコード、NFCなどの近接ペイ メントが含まれる。第三者モバイル決済の収益パターンはオ ンライン決済と似ているが、市場は未だ発展初期にあり、今 後の発展規模は移動端末の普及、消費習慣の育成、技術 基準の統一およびそれぞれの利益競争によるものである。 現在、インターネット大手の支付宝や微信支払(テンセント が提供するチャットアプリ)によるQRコード決済方式は先んじて優位性を占めている。

アクワイアリング 
オフラインのアクワイアリングの運営主体は商業銀行と第三 者決済機関が含まれ、企業店舗で配置された POS レジ端 末を通じて銀行カード、プリペイドカードと第三者決済口座 資金を取扱う業務である。取引額に従い手数料を徴収することで収益をあげ、カード発行銀行、アクワイアラ機関、清算 組織の間は 7:2:1 の比率で手数料が異なる。商業銀行を除 く第三者アクワイアラ機関のうち、銀聯傘下の銀聯商務の市場シェアが最大である。アクワイアラ機関が多いことから、競争が激しく、市場が混乱しているほか、銀聯が清算組織であ ると同時に、アクワイアラ機関として参入することも非難され ている。

O2O とモバイル決済の発展に伴い、第三者決済機関はオフ ラインのアクワイアリング市場に参入し始めた。支払宝や微信支払などの第三者決済機関は実店舗の POS レジ端末をNFC 決済や QR コード決済ができるように改造するほか、O2O でマーケティングや会員管理などの付加価値サービスを実現するようになった。

2 産業チェーン

決済業界のしくみをみると、銀監会、人民銀行と中国支払清算協会は監督管理機関であり、銀聯が唯一の清 算組織として重要な位置に立つ。商業銀行、第三者決済機関、通信キャリアは決済体系の主な参与主体、 決済ソフト・ハードウェアのサプライヤーは決済業界のインフラ建設者、小売店と利用者はサービス対象である。 

産業チェーンからみれば、決済業界にはインフラ、決済チャネル、付加価値サービスという三つのセクターか ら構成されると分析するケースがある。

インフラには決済システム、決済端末ハードウェア製造、カードとスマートフォンという決済搭載物、決済安全 などが含まれており、こうしたインフラは決済業務の安全運行を確保する不可欠のものであり、業界がオンライ ンのインターネット決済から、オフラインのモバイル決済へのシフトを促進する原動力と基礎条件である。

決済チャネルとは、支付宝や財付通といった決済ライセンスを持ち、支払・取引・決済を提供する機関で、決 済業界の運営主体であり、技術やビジネスモデルの革新を通して決済プロセスの最適化に注力する。

付加価値サービスとは、「余額宝」、「理財通」といった決済のうえに小売店向けにマーケティングネットワーク や顧客管理、小口貸出、消費者金融など、既存支払データをもとに指向的マーケティングや信用調査サービ スを提供することである。

決済市場における新たな発展動向

第三者決済による銀聯へのインパクト

オンライン決済市場において、第三者決済が電子商取引の急速な発展に伴い規模の急拡大を実現し、人民 銀行が 2011 年に第三者決済ライセンスを発行して以来、2014 年 12 月 31 日現在 269 社まで拡大し、うち 53 社は銀行カードのアクワイアリング資格を持つ。第三者決済機関の活躍は銀聯商務と金融機関により独占さ れてきたアクワイアリング業務を打破し、金融機関を十分に活用しきれてこなかった小規模販売店利用者を拡 大させた(図表 12)。

一方、オフライン決済市場において、中国銀聯はアクワイアリング市場に十数年間取り組んでおり、POS レジ 市場で絶対的独占地位を占めている。現在、中国銀聯のオフライン決済での収益モデルは以下の 2 種類に 分かれる。第一に、清算機関として銀行間取引手数料の 10%(カード発行銀行:アクワイアラ機関:清算組織 =7:2:1)を取ることで、中国銀聯は現在唯一の清算機関である。第二に、持株子会社である銀聯商務を通じ てアクワイアリングを展開し、取引手数料の 20%を取る。2014 年 12 月末時点、銀聯商務が全国すべての省 級行政区(台湾を除く)で拠点を設立し、337 の地級市以上の都市をカバーし、特約店舗 386.65 万店、POS レジ 469.67 万台、ATM2.52 万台、自動サービス端末 22.13 万台を有しており、国内最大の銀行カードのアク ワイアラ機関である。

2013 年 7 月、人民銀行は「銀行カード収単(アクワイアリング)業務管理弁法」を公布し、オフラインのアクワイ アリング業務において、第三者決済機関は中国銀聯を経由せず、直接に銀行と接続することを規定し、第三者決済機関のオフラインの銀行カード清算市場への参入を緩和した。2014 年初から、支付宝と財付通は一 連の補助金政策により、団体購入、配車、紅包(お年玉)、デリバリー、コンビニなどオフライン決済の様々な 消費場面に進出してきた。

インターネット口座の O2O での利用に伴い、第三者決済機関はオンライン消費者を実店舗に導き、補助金 優遇を提供し、小売店と消費者に第三者決済アプリを利用して決済取引を行わせたことは、銀聯のオフライ ンにおけるアクワイアリング市場に大きな影響を与えた。第三者決済企業が主導する 3 者決済モデルは銀聯 を経由しないため、銀聯の清算地位を脅かした。他方、第三者決済企業はアクワイアラ機関として、銀聯商務 のオフラインのアクワイアリング業務にも影響を与えた。

比達諮詢(Big Data-Research)の統計によると、第三者インターネット決済市場シェアのうち、支付宝がトップ の 74.31%、財付通が 13.18%と 2 位に次き、両者合計で 87.49%のシェアを占めており、アリババとテンセント の巨大なユーザー基盤と多様な応用場面が下支え要因となっている。一方、銀聯商務は着手が出遅れ、具体的な場面での優位性に欠けることから、11.4%のみのシェアを占める。

清算ライセンスの緩和に伴う銀聯へのインパクト 

中国国内の銀行間決済業務は銀聯チャネルを通さなければならず、1 件当たりの手数料はカード発行銀行が 70%、POS レジを提供する銀行または他のアクワイアラ機関(銀聯子会社の銀聯商務を含む)が 20%、銀聯が 10%と規定される。清算ライセンスの独占性により銀聯は国内清算市場を独占しており、マスター、VISA といった国際カード組織は銀聯と共同で「双幣カード」(外貨で物を買って人民元で決済できるクレジットカー ド)の発行により、中国人の域外消費市場の一部を享受するしかない。

一方、中国の WTO 加盟、経済市場化の発展および支付宝など第三者決済機関のオンライン清算業務に対 する監督管理に伴い、清算ライセンスがしだいに緩和されてきた。2014 年 10 月、国務院常務会議で銀行カ ード清算市場を緩和し、条件を満たす内資・外資企業はいずれも中国域内で銀行カード清算機関の設立を 申請できることを決定した。2015 年 4 月、国務院は「銀行カード清算機関の参入管理の実施に関する決定」 を公布し、2015 年 6 月 1 日より、要求を満たす機関は銀行カード清算業務許可証を申請でき、中国域内で銀行カード清算に従事できるようになった。中国銀聯が 12 年間独占してきた清算市場独占時代の終了を示唆 している。

現在の銀聯の収入構成は、1国内 POS レジ取引の接続収入、すなわち手数料収入、2国内 ATM 収入、 3国際業務収入と新型業務収入が挙げられる。うち、POS レジ取引の接続収入が銀聯営業収入の 60% -70%を占める。中国の清算ライセンスの緩和により、他の清算組織からの影響が予想られる。

支払ライセンスと異なり、清算体系の重複建設の回避を考慮すれば、清算ライセンスを取得する機関はそれ ほど多くなく、VISA、MasterCardといった外資清算組織のほか、オンライン決済大手の支付宝、オフライン 決済の「小銀聯」と呼ばれる「通聯支払2」の可能性が大きいと予測される。

O2O のモバイル近接ペイメントの発展潜在力が大きい

モバイル決済は端末のインターフェースとして、O2O モデルの中に重要な作用を発揮する。それをコントロー ルできれば、ユーザーの財布、さらにユーザーの消費方向を主導することになる。現在、支付宝、微信銭包に代表される第三者決済機関はモバイル決済の主流的地位を占め、支付宝 1 社がモバイル決済市場の約 8 割のシェアを占めており、両社はモバイル決済をスーパー、ガソリンスタンドなど多くの領域に拡大した。スマートフォンの大規模な普及、数多くの店舗との接続、ユーザー利用率の向上により、モバイル決済 の取引規模はここ数年爆発的な成長を遂げた。

艾瑞咨詢の統計によると、2013 年の中国の第三者モバイル決済市場規模は 1 兆 2,197.4 億元、2014 年は前 年比 391.29%増の 5 兆 9,924.7 億元、2015 年上半期は前半期比 24.8%増の 4 兆 261.1 億元となった。2015 年下半期は上半期比 28.6%増の 5 兆 1,763.8 億元となる見込みである。

モバイル決済市場のうち、リモートペイメントが主として、2013 年の割合は 93.1%となり、近接ペイメントの割合は 0.8%と発展余地が大きい。近接ペイメントのうち、QR コード決済と NFC 決済が最も広く活用さ れている技術である。QR コード決済の産業チェーンに消費者、銀行または第三者決済、端末設備業者(QR コードスキャナー、POS レジなど)および小売店が含まれる。産業チェーンが短く、それぞれの利益を調和しやすいほか、インターネット大手の資金と顧客優勢を持つため、QR コード決済の普及は速い。モバイルイン ターネット時代に O2O がトレンドとなり、QR コードはリアル世界とデータ世界をつなぐ低コストの架け橋として、決済口座システムを搭載し、顧客情報管理(CRM)機能を追加することにより、インターネット大手がオンライ ンとオフラインの連結と循環を実現する重要なツールとなることから、インターネット大手は QR コード決済の普 及に力を入れている。

一方、QR コード決済は政策リスクが大きい(技術的基準が未だ一本化されていない)とのデメリットが指摘される。インターネッ ト大手は QR コードにより市場を拡大すると同時に、より安全で便利な NFC 決済を試行し始めている。

NFC 決済の産業チェーンには携帯電話業者、チップとアンテナ製造者、通信キャリア、銀聯、商業銀行、第三者決済、端末設備製造者、アプリ開発者などが関わっており、産業チェーンが長く、利益競合が複雑であり、 再編の難易度は QR コード産業チェーンをはるかに超える。具体的な NFC のソリューションとして、グーグル が HCE、アップルが Apple Pay という各自の技術を開発し、普及に注力してきた。しかし、実際には NFC 対 応可能なスマートフォンの普及、取扱端末の更新が遅れており、産業チェーンにおける各方面の利益競合な どにより、推進拡大が遅れている。そのため、銀聯は NFC 決済を推進するのと同時に、QR コードによる決済 システムにも注力することで、インターネット大手からの市場獲得を試みている。

チャネルからみれば、今後、決済市場の発展重点はモバイル決済であるが、O2O モデルと結合した近接ペイ メントは最も大きく注目される。最近の「双十一」商戦における各 EC 大手のモバイル端末の売上は大体全体 の 60%以上に達しており、モバイル端末のリモートペイメントは安定的な発展期に入ったといえる。他方、オフラインの近接ペイメントにおいて、スマートフォンなどのモバイル端末による決済の比率は依然低いことから、 今後の重要な発展方向の一つとみられる。現在、近接ペイメントをめぐっては、オフラインで圧倒的であった 銀聯もオンラインで支配的な地位にある支付宝、財付通も QR コードによる決済、NFC 決済双方に注力して おり、それぞれの間で激しい競争が展開されていくと思われる。

業務モデルからみれば、手数料収益は取引規模によるものであるが、規模において銀聯、支付宝と財付通 は絶対的な優位性を持つことから、その他の決済機関は新たな収益点を探り出さなければならない。具体的 には、決済データをもとに生まれた中小規模小売店向け貸出や消費者金融といった付加価値サービス3およ び特定業界向けの決済サービスがみられ、決済サービス市場の差異化の発展が新たなトレンドになろう。

情報源:BTMU(China)経済週報より抜粋