2016/06/03

銀行業務の未来は中国にあり

上海在住で市場調査の仕事をする33歳のウーさんは、日々の出費を賄うために通常、数百ドル相当の人民元をインターネット上の口座から引き出せるようにしている。バーゲンの前にはその額を増やす。スマートフォンの画面を数回タップするだけで、投資商品を購入したり、レストランで友人と割り勘したり、家族に送金することができるのだ。コンビニエンスストアで7.50ドルの箱入りの茶を購入するのにもその口座を利用する。

「毎日のように使っています」とウーさんは言う。「ここをクリックするとお店の人がスキャンできるコードが出てきます。財布を取り出す必要すらないんです」。

銀行はこうした決済に直接関与していない。米国に拠点を置く金融テクノロジー企業が目指すビジネスを実現した中国の大手ハイテク企業は、一連の資金管理サービスへの参入手段としてそのインターネット決済システムを利用し、預金や手数料を同国の銀行から奪い取っている。

最近のシティグループのレポートによると、中国の金融テクノロジー企業にはすでに中国の大手銀行とほぼ同数の顧客がいるという。この分野で先行するマ蟻金融服務集団(アント・フィナンシャル・サービシズ・グループ)はそのスマートフォンアプリ、支付宝(アリペイ)――毎月、ウーさんら4億5000万人に利用されているシステムの1つ――を消費者金融サービスの商店街と位置付けている。親会社の阿里巴巴集団(アリババグループ)もこれと似通った手法で中国の電子商取引最大手に成長した。

今のところ、支付宝アプリはハイテクなクレジットカードであり、携帯電話を使った決済を簡単にしている。ユーザーが表示させたQRコードを店員がレジでスキャンすると支払いが完了する。アップル・ペイのようなものだが、ほぼどこでも利用できるという点で異なっている。他の人に直接に送金することも可能だ。

支付宝はタクシーの予約、麺の出前といったサービスに加えて、金融商品の販売を増やしている。余分な現金を預けて利子を得たいならオンラインMMF「余額宝」のアイコンを、より高い利回りの投資商品を購入するのであれば「マ蟻聚会(アント・フォーチュン)」のアイコンをクリックする。グループの新しいネット専門銀行、マイバンクは今年に入ってから平均約6100ドルの融資を87万件も提供したという。

中国インターネットサービス大手の騰訊控股(テンセントホールディングス)も人気のチャットアプリ「微信(ウィーチャット)」を活用して金融サービスを構築している。その7億6000万人のユーザーは春節(中国の正月)期間中に320億個もの「紅包(日本のお年玉に相当)」をやりとりしたという。

昨年、騰訊控股はマ蟻金融服務集団に続いて少額預金や少額融資を扱うネット専門のウィーバンクを立ち上げ、中国の2350億ドル規模と言われるインターネット決済事業におけるリーダーとしての立場をさらに強固にした。

ウィーバンクの口座は1分で開設できる。それに必要なのは申込者の携帯電話番号、身分証明書番号、携帯電話のカメラで撮影された顔写真だけである。

中国政府は個人消費に拍車をかけ、この25年間で最低となった経済成長率の低迷から脱するために、こうしたデジタル金融のトレンドを支援してきた。しかし、その業界の目まぐるしい進歩に規制当局が追中国はスマホ決済の先進国い付けないということもあった。「ピアツーピア(P2P)」サービスを含めたオンライン投資会社の爆発的な急増で、預金者の残高がすべて盗まれてしまうという事態も繰り返し起きている。

ウーさんはそうしたサービスを慎重に利用している。預金額が数百ドルであればオンライン口座でもそれほど心配ないが、それ以上の額だと「安全上の問題」があるので、政府が預金を保証してくれる銀行に預けたいとウーさんは言う。マ蟻金融服務集団や騰訊控股はその取引にしか使えない60秒おきに変更されるQRコードなど、決済を安全にする技術に投資してきたと述べている。

中国はそうしたサービスを米国よりも迅速に導入している。携帯電話での決済技術はアップル、サムスン、アンドロイドなどが推進しようとしているにもかかわらず、依然としてもの珍しがられる存在だ。米連邦準備制度理事会(FRB)が3月に発表した調査では、過去12カ月間にスマートフォンで決済をしたことがあるという米国のユーザーは約25%だけだった。

情報源:WSJ

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