2017/10/04

中国で大人気のQRコード決済、日本での浸透度

QRコードを使った決済は中国で爆発的に広がっている。都市部を中心に急速にキャッシュレス社会へのシフトが進む。さらに可処分所得の増えた中国人が世界各地へ飛び出し、これら旅行客を取り込むために世界各地でQRコードを使った決済インフラの整備が進んでいる。

QRコード決済は日本でも広がりを見せている。日本経済新聞電子版は、2018年春にもアリババグループが日本国内で決済サービス「支付宝(Alipay)」を開始すると報じている。

日経新聞によると、ローソンや家電量販店など一部小売店でAlipayのサービスが既に提供されており、主に中国人旅行客をターゲットとしたインバウンド向けのキャンペーンが展開されているという。この仕組みを日本人向けにも展開し、3年以内に1000万人規模の利用拡大を目指すとしている。

当初は上海や北京などの大都市の一部店舗で見かける程度だったが、年を経るごとに他の都市圏へ急拡大していき、2017年には今日話題になっているようなQRコード決済のインフラが街の至るところで展開されることになった。

現在、この中国発祥のQRコード決済インフラは急速に世界中に拡大している。アジア各国をはじめ、米国や欧州の金融機関との提携で、Alipayを利用できる加盟店の数は日々増え続けている。前出ローソンもその1つだ。

これらの提携で重要な点は、POSの改修やmPOSなど簡易型POSの設置により店舗での決済手段の1つとしてAlipayのQRコード決済を選べることにある。つまり、進出した先でAlipayユーザーを増やすというよりも、既にAlipayアカウントを持っている既存ユーザーの利便性向上が主眼というわけだ。

Alipayと並ぶ決済サービスとして中国国内で熾烈な顧客獲得合戦を繰り広げているテンセントの「WeChat Pay(微信支付)」も事情は似たようなものだ。WeChat Payの登録ユーザー数は本稿執筆時点で6億人とAlipayよりも多い。ただ、統計データによっては取引金額などにおいてAlipayのほうが高いシェアを持つという結果もあり、ユーザー数そのものの比較はそれほど意味を持たないと考えていい。

日本でのサービス展開では、日本在住ユーザー向けサービス提供よりも中国人旅行客のアクワイアリングを重視しているという点でAlipayと共通している。ただ、その展開スタイルは、日本の代理店を通して加盟店審査や管理などを行う方針のAnt Financialに対し、Tencentは直接加盟店募集を行うオープン方式を選択しているという点で大きく異なっている。

海外では一般的だが、日本国内では両社のアクワイアリング業務は排他契約になっており、リクルートのAirレジがAlipay、アプラスがWeChat Payといった具合に店舗向けの決済サービスを提供しているが、両方に対応したという例はほとんど見かけない。AlipayとWeChat Payへの同時対応を発表したオンライン決済サービスのStripeも海外に限っている。

中国国内でも両方の決済に対応した店舗がある一方で、片方の決済手段のみに対応というケースも少なくない。これはマーケティング予算を投入して両社が熾烈なシェア争いを行っている結果であり、日本への展開においてもこれが現れたものだと考えられる。

中国ではオンライン決済手段としてAlipayとTenpay(財付通、Tencentのオンライン決済サービス)の利用が進み、リアル店舗決済への拡大にともなってQRコード決済が流行ったという経緯がある。このためユーザーはオンラインアカウントを使った決済サービスを利用するという素地が整っていた。一方の日本ではこうしたオンライン決済で使える決定的なアカウントサービスがなく、ユーザーをイチから獲得しなければならない。インフラ整備を待たなければいけないという問題もあり、この点が日本の市場開拓におけるネックとなる。

その意味で、現在日本国内でQRコードを使った決済サービスで有利なポジションにあるのがLINE社だといわれている。同社は「LINE Pay」という決済サービスをチャットサービスのLINE上に構築しており、個人間送金や店舗への支払いなどをLINEを通じて行えるようになっている。店舗決済ではアプリを通じてオンライン上で決済できる。加えてキリンビバレッジとの提携で展開している自販機「Tappiness(タピネス)」のようなO2O型の対面決済から、QRコードによる対面決済まで、複数の手段を通じて支払いが可能になっている。

チャット用インターフェイスを決済に使うという点では、LINEはWeChat Payに通ずるものがある。また、日本国内だけでLINEのユーザー数は既に7000万を突破しており、人口カバー率で言えば6割近い。今後スマートフォンを通じた購買行動の中心になるとみられる若年層を中心に利用者層が広がっていることを考えれば、インフラの展開次第でLINEはライバルに対して有利に立ち回ることが可能になる。

2017年8月、NTTドコモがQRコード決済市場に参入するという報道が話題となった。同社は2017年6月に「FinTech推進室」という部署を新設し、FinTech事業の強化を目指すと表明している。関係者の話によれば、2017年初頭の時点で既にQRコードを使った決済システム開発を始めており、2017年度内の展開を目指してプロジェクトを薦めているという。

このサービスがLINEと異なるのは、NTTドコモが持つキャリア決済の仕組みと連携している点で、ドコモユーザーであればすぐにサービスを利用できるという特徴がある。また、おサイフケータイのインフラはクレジットカード決済のネットワークと接続するなど、契約や設備面での負担が大きいという問題があったが、QRコード決済は店舗導入が容易というメリットを掲げ、加盟店開拓を行っていくようだ。

これらの特徴により小規模な商店での導入ハードルが下がるほか、Alipayを導入したローソンのようにPOSにアプリケーションを追加するだけで多くの大規模チェーン店が対応可能になる。国内ユーザー開拓という点で、中国系のサービスよりもLINEをライバルとして意識している面が強く、むしろAlipayやWeChat Payなどはインフラ面での相乗りさえ可能だとみている。このほか、NTTドコモの動きにKDDIやソフトバンクといった競合の携帯キャリアらも相乗りしようという声が聞こえてきており、インフラ展開の面で3社が歩調をそろえる可能性がある。

現在、ICカードの標準化団体であるEMVCoが中心となってQRコード決済の標準化作業を進めているが、これにMastercardやVisaなどの国際カードブランドも賛同している。これは、既に利用が進んでいるQRコード決済手段を上位互換として取り込み、規格が乱立する前に一定の方向を示す狙いがあると筆者は考えている。

「アフリカやアジア太平洋地域など、カード決済インフラが発展しておらず、コスト面や通信インフラ面でPOS設置の難しい国々には、QRコードが決済手段に適している」とVisaは説明する。同社は「mVisa」というQRコードを使った決済インフラをアフリカなどを中心に世界15カ国で展開しており、既存のカード決済インフラが展開しにくい穴を埋めていく手段として考えているようだ。

一方で、市場には複数の決済手段が存在する余地があることも認めており、ニーズに応じてこうした先進国でもQRコードのインフラを展開していく可能性があることを示唆している。いずれにせよ、現状ではインフラの穴を埋める手段としてのQRコード決済という考えだ。

日本国内でのQRコードの今後の展開をまとめると、AlipayやWeChat Payの日本進出は当面は加盟店開拓が中心となり、アカウントベースで既に日本の顧客を獲得しているLINEや携帯キャリアらがインフラ展開を進めるという構図になる。両者は不可分ではないため、ある意味で相乗りする形でインフラ開拓を目指していくかもしれない。まずはNTTドコモの具体的な動きが見えてくる2017年末から2018年初頭にかけての展開に注目したい。

情報源:ITPro

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