2017/11/30

中国スマホ決済660兆円、2年で6倍

中国で「生活インフラ」として定着したスマートフォン(スマホ)決済。14億人の消費市場での決済は2年で6倍に増え、年間660兆円にも達した。簡単にお金を徴収できる仕組みは起業家スピリットを刺激し、波状的に新しいサービスを生む。

中国は今、消費生活とお金の流れがガラリと変わる転換点に立つ。中国の調査会社によるとスマホ決済は3年ほど前から急拡大し2016年に総額で39兆元(約660兆円)と日本のGDPを上回った。

14億人の巨大な消費マネーを追い求め、起業家がシェア自転車や生鮮食品の30分配送など斬新なサービスを世に送る。利便性が高まって消費者に浸透し、それが新サービスを呼び込む。

日銀のリポートでは店頭でスマホ決済を利用する人は日米独が2~6%だが、中国では98%が「3カ月以内に使った」と答えた。上海の一角に密集する八百屋や雑貨店など20店に聞くと、電子決済を使えないのは婦人靴店1店のみ。ある飲食店員は「支払いの9割がスマホ」と言う。中国のスマホ決済は「支付宝(アリペイ)」(アリババ集団系)と「ウィーチャットペイ」(騰訊控股=テンセント系)の2強に延べ12億人が登録する。

アリババのアリペイの場合、1日の決済件数は1億7500万回に及ぶ。アリペイを使うには実名や身分証番号の登録が必要だ。支払金額や商品、店舗名などの消費情報が、名前や年齢といった個人情報とひも付いた形で毎秒2千件のペースで蓄積される。

「データは新しい石油になる」。アリババの馬雲会長はビッグデータ解析や人工知能(AI)が進化する今のビジネス環境において、膨大なデータはなくてはならない「石油」だと主張する。

この現代の石油で何ができるのか。カギを握るのが、アリペイの「芝麻信用」というサービスだ。「芝麻」は日本語で「胡麻(ゴマ)」。物語「アリババと40人の盗賊」で主人公が宝の山を見つけるために唱える「開けゴマ!」は中国語で「芝麻開門!」と言う。

「ゴマ信用」を開いてみた。利用者の信用力を950点満点で評価し、スコアは勤務先や学歴など個人情報を追加入力すると増す仕組み。個人情報の入力を避けている記者の信用力は590点だが、頻繁に使うという知人の中国人に聞くと840点と高い数字だった。

信用力が高いとシェア自転車の保証金がタダになったり、海外旅行の際にWiFiルーターが無料で借りられたりするなど様々な特典が付く。この特典目当てに中国の消費者はこぞって個人情報を登録する。アリペイのデータは厚みを増すと同時に、信用スコアの信頼度が高まる。

信用力評価は多くのビジネスで重要な意味を持つ。上海の消費者金融会社は「ゴマ信用」のスコアだけを基に無担保で最大5千元を貸し出すサービスを始めた。

富裕層にアクセスしたい高級ブランド店や、所得水準に合わせ効率的に広告を打ちたいメーカー、貸し倒れリスクを減らしたい金融機関――。中国では今、アリペイが見つけた「宝の山」に多くの企業が群がり始めている。アリペイを運営するアント・フィナンシャルの陳竜・最高戦略責任者は「中国ではフィンテックはすでに生活に浸透した」と話す。

情報源:日本経済新聞